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続・みらいのはなし 11
シリアス傾向にあるお話ですので、苦手な方はスルー願います。
初めての方はカテゴリ「未来」からどうぞ。






「琴子、愛してる」

二人きりになった病室で、直樹は琴子の耳元に唇を寄せた。
誰にも聞こえないような小さな声で、琴子の耳元に流し込むように囁いた。
心のそこから琴子を愛していても、愛情を言葉で表現することは滅多にしない。
けれども、重雄の言葉を聞いた直樹はどうしても言わずには居られなくなった。

『ちゃんと自分の気持ちを伝えなかったこと』

後悔していると呟いた重雄の一言が、直樹の心を大きく揺さぶった。
手術は成功しているし、琴子が目覚めるのを待つのみだ。
目を開けた彼女は、目の前の自分の姿を見てにこりと笑うだろう。
目を瞑ったまま眠り続ける琴子の顔色は良い。
バイタルの異常がないことも、モニターが示してくれている。
大丈夫、万事うまくいく。
直樹は琴子の手を握り、優しく包み込んだ。
琴美にしてやるようにゆっくりと両方の手の甲を撫でると、琴子の口角が少し上がって微笑んだような気がした。

「良く頑張ったな、それでこそ琴子だ」

誰よりも愛しい、最愛の人へ。
きちんと自分の気持ちを伝えることが、今出来る精一杯のことだと直樹は思った。
琴子が眠ったままでも良い。
直樹に関しては恐ろしいぐらい勘が働く琴子。
もしかしたら聞こえているかもしれない。

「愛してる、俺を残して行かないでくれ」

今まで一度も言えなかったけれど、でもずっと思っていたことを直樹は琴子の耳元で囁いた。
いつまでもそばに…。
いつまでもいつまでも、自分の隣に居てほしい。
琴子の居ない人生なんて、考えられない。

*****

何もない、上も下も右も左も白に囲まれた空間を、琴子は一人で歩いていた。
自分がどこにいるのか、どこに行けばいいのかもわからない。
立ち止まって振り返ってはいけないような気がして、琴子はただひたすら歩いていた。
進んでも進んでも、周囲の景色は変わらない。
この道でいいのかわからないが、誰かに聞こうとしても人っ子一人いない。
琴子は途方にくれて、とうとう立ち止まってしまった。

「入江くん、どこ?」

のど元で何かが引っかかって声がうまく出せない。
それでも琴子は呼びかけた。

「琴美、出ておいで?」

返事がないか、耳を澄ます。
だが、返事は帰ってこない。
声が小さくて聞こえなかったのだろうか、もう一度琴子は愛しい家族の名前を呼んだ。

「入江くん、琴美!」

叫んだつもりだが、声は響かない。
返答はなく、白い空間に自分の声だけが空しく吸い込まれていく。
琴子は泣き出しそうになりながら、また足を動かした。
どこに向かっているのか、わからないけれど一歩踏み出すしかない。

「琴子」

急に自分の名前を呼ばれ、琴子はきょろきょろと見渡してその声の主を探した。
だが、目の前にはやはり人っ子一人居ない白い空間が広がっている。

「良く頑張ったわね、あなたが頑張ってきたことを見ていたわ」

「誰…?」

その問いに声の主が答えることはない。
ただ、声の主は優しく穏やかな声で話を続けた。

「直樹さんと琴美ちゃんの下へ帰りなさい」

「ここはどこ?どこに行けば二人に会えるの?」

琴子がかすれた声で何とか叫んだ次の瞬間。
白く何もないままだった空間が二つに別れ、目の前には道が広がっていた。

「どっち?どっち?」

「右に進むのよ」

視界がぼやけてきて、琴子は自分が泣いていることにようやく気づいた。
どうして、涙が出るんだろう。
寂しいから?それとも、苦しいから?

「琴子、あなたのことを愛しているわ」

ああ、この声はお母さんの声だ…。
琴子がそう思ったときには、琴子の視界から白い空間は消えてなくなっていた。

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